ジーンズの色落ちを見ていると、時々、縦方向にすっと筋が入っているものに出会う。「縦落ち」と呼ばれる色落ちで、セルヴィッジのヴィンテージ系デニムに特に多い。

 

「デニム 縦落ち なぜ」と検索して辿り着く方も多いようなので、少し整理してみる。

 

縦落ちとは、経糸のムラが生む縦筋のこと

縦落ちは、生地の縦方向(経糸の方向)に沿って現れる、濃淡のある色落ちの筋を指す。全体が均一に薄くなるのではなく、糸一本一本の太さのムラが、そのまま色の濃淡として生地の表に出てくる現象になる。

 

なぜ起きるか——スラブとロープ染色

原因は、経糸に含まれる「スラブ」と呼ばれる太細のむらにある。リング紡績で糸を引き出すとき、繊維の送り出し速度がわずかに揺らぐことで、太い部分と細い部分が交互に生まれる。

 

この糸をロープ染色でインディゴ染めすると、太い部分ほど染料が多く付着し、糸の芯までは届かない「芯白」を保ったまま、表層のインディゴだけが厚く乗る。洗いや摩耗を重ねるうち、その厚い部分から先に色が抜けていくため、縦方向のライン——縦落ち——として見えてくる。

 

オープンエンド紡績のように均一に紡がれた糸では、このスラブがほとんど生まれないため、縦落ちも出にくい。シャトル織機で織られたセルヴィッジデニムに縦落ちが目立つのは、使われる経糸そのものがムラを残しやすい紡績方法によっている場合が多いからだと思う。

 

生地から見た「縦落ちする生地・しない生地」

生地を選ぶ側の視点で言うと、縦落ちが出やすいかどうかは、企画の段階である程度読める。

 

糸のムラを残したヴィンテージ系の生地は、縦落ちが表情として出やすい代わりに、均一性という意味では手間がかかる。反対に、均一なオープンエンド糸を使った生地は、縦落ちのような劇的な変化は出にくいが、色落ちが穏やかで扱いやすい。どちらが良い悪いではなく、狙う経年変化の方向によって選ぶものだと考えている。

 

アタリやヒゲ・ハチノスと同じように、縦落ちも「糸と染色がどう設計されているか」の結果として生地の表に出てくる。アタリについて書いた回でも触れたが、色落ちの表情は、身体の動きだけでなく、糸そのものの個性が土台になっているように思う。

 

今日も反物を広げて、経糸の並びを眺めながら、次にどんな色落ちが育つのか考えている。


縦落ちの表情は、生地の段階でほぼ決まっています。気になる方はスワッチからどうぞ。