デニム好きの会話で「ファースト」「セカンド」「サード」と呼ばれるのは、リーバイスのデニムジャケット(いわゆるGジャン)の世代区分のことです。

品番で言えば506XX・507XX・557XX。それぞれが登場した時代、廃止された理由、仕様の違い——改めて資料を整理してみると、それぞれの変更に、はっきりした文脈があることが分かります。

 

Type I(506XX)——1905年、「ブラウス」という名前で始まった

いわゆる「ファースト」と呼ばれる世代の品番は506XXです。複数の資料によると、1905年頃に市場に投入されたとされています。

ただし当時の呼称は「ジャケット」ではなく「ブラウス(blouse)」でした。リーバイスのカタログで「ジャケット」という言葉が使われるようになるのは1938年のことで、ウエスタンウェアカタログ「Dude Ranch Duds」がきっかけだとされています。

素材は9オンスの未サンフォライズドデニムで、アモスキーグ・マニュファクチャリング・カンパニー(Amoskeag Manufacturing Company)が製織していたと記録されています。

 

506XXのディテール

シルエットはボックス型で、胸ポケットはひとつのみ。背中下部にはシンチバック(clincher・クリンチャー)と呼ばれる金属バックル付きの調整ベルトが付いていました。これはウエストをしぼるための機構で、作業着時代のジャケットとしては一般的なディテールでした。

胸ポケットの上のフラップは初期モデルにはなく、正面には縦のプリーツ(ナイフプリーツ)が入っていました。

リーバイスの「赤タブ」が506XXに初めて縫い付けられたのは1936年。この年、赤タブが「LE VIS」の片面のみに入った形で導入されました。

 

戦時仕様と生産の末期

第二次世界大戦中には、金属統制の影響でシンチバックのバックル素材がシルバーからブロンズに変更され、ボタンも「ドーナツボタン(月桂樹)」に置き換えられるなど、いくつかの簡略化が行われました。フラップが省略された時期もあります。

506XXの製造終了時期については資料によってばらつきがあり(1941年説・1947年説等)、戦時の仕様変更が複雑な経緯をたどっているためです。おおむね1950年代初頭には507XXへ移行していたとみられています。

 

Type II(507XX)——1953年、シンチバックが消えた年

「セカンド」と呼ばれる世代は507XX、1953年に登場しました。この年から1962年頃まで製造されたとされています。

506XXとの最大の違いは二点あります。一つは胸ポケットが左右ふたつになったこと。もう一つは、背中のシンチバックが廃止され、両サイドのウエストアジャスター(サイドアジャスター)に置き換えられたことです。

シルエットは506XXよりわずかに長く、ボックス型からやや身体に沿う方向にシフトしています。ただしナイフプリーツはまだ残っており、全体的には前世代の延長として設計されています。

 

507XXのディテール

この世代から、リーバイスの赤タブが両面に「LEVI’S」と表記される「ツーサイドタブ」になりました。ポケットのフラップにはバータック補強が入り、ダブルホースのレザーパッチも引き続き採用されています。

フラップの形状はまだ角が立った台形型で、後のType IIIで特徴的になる「とがったフラップ」はまだ登場していません。

 

Type III(557XX)——1962年、Vステッチと尖ったフラップ

「サード」、あるいは「トラッカージャケット」という通称が広く定着したのはこの世代からです。品番は557XX、1961年末から1962年にかけて市場に出たとされています(リーバイスの復刻版に「1961」の年号を冠したものがあるため、試作・量産開始のタイミングにわずかなずれがあると考えられます)。

前の二世代からの変更点は大きく三つです。

  1. 胸のナイフプリーツが廃止され、代わりに「Vステッチ」と呼ばれるV字型の切り替えステッチが入った
  2. 胸ポケットのフラップが、特徴的な先端が尖った「ポインテッドフラップ」になった
  3. 全体のシルエットが大きく細身に変わり、1960年代のファッション感覚に対応した

サイドアジャスター(ウエストアジャスター)は507XXから引き続き採用。赤タブは引き続きツーサイドで、1971年以降は小文字「e」のタブに変更されていきます。

 

トラッカージャケットという呼称

「トラッカージャケット(Trucker Jacket)」という呼称がいつから使われ始めたかは、資料によって幅があります。Type IIIが登場した1960年代以降に定着していった通称とみられていますが、リーバイスの公式カタログにこの言葉がいつ登場したかは、現時点では確認できていません。「Gジャン」は日本独自の略称で、”Gパン(ジーンズ)のジャン(ジャケット)”から来ているとされています。

 

三世代の仕様変更をどう読むか

506XX・507XX・557XXの変遷を並べると、一つの方向性が見えます。

作業着として機能を重視した設計(シンチバック、ボックスシルエット、厚手一枚ポケット)から、日常着・ファッションとして身体に馴染む設計(サイドアジャスター、細身シルエット、デザイン性の高いディテール)へ、という移行です。

シンチバックが消えたのは、ウエストを外から絞る必要がなくなるほどシルエットそのものが変わったためです。プリーツがVステッチに変わったのは、胸板を立体的に見せるためではなく、余裕を設けずにシルエットを整えるためでした。

 

商談現場での「世代」の話

デニムの商談で「Gジャンのサンプル、ファーストで」と一言言われたとき、それが指しているのは506XXのシルエット・ポケット・ディテールの話であり、必ずしもヴィンテージ現物ではありません。「セカンドっぽい雰囲気で、シンチバックをディテールとして残したい」という要望もあれば、「サードのVステッチとポインテッドフラップが好き」という依頼もあります。

世代の分類を知っていると、方向性の確認が最初の一言で済みます。知らないと、サンプルが出てから初めて「これじゃない」という話になる。仕様書の最初の一行を揃えることの意味を、Gジャンの世代を整理していると改めて感じます。

 

今日もまた、作業台の上で、三世代のジャケットが並んでいます。

 


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参考文献・出典