ジーンズの膝裏に出る、蜂の巣状の色落ち跡を「ハチノス」と呼ぶ。英語では “honeycomb”。

なぜそう呼ぶか ― 構造を分解すると、これは膝の屈伸で生地が反復的に折り畳まれる箇所に、糸の浮きと色素の摩耗が同時進行で起きた結果だ。膝裏は、座る・しゃがむという動作のたびに、生地が縦方向に圧縮され横方向に伸張される。この力が、織り目の凹凸を強調する形でインディゴを削り取る。

きれいなハチノスが出るには、いくつかの条件がある。

  • 糸が太い(オンスが高い、糸番手が太い)
  • 織り密度が高い
  • インディゴ染色が芯白(糸の中まで染まりきっていない)
  • 履く側の屈伸頻度が安定している

逆に言えば、ハチノスが綺麗に出るかどうかは生地のスペックで概ね決まる ― 履く側の癖だけではない。「育てやすいデニム」という言い方の正体の半分は、ここにある。

ハチノスのバリエーションは大きく「タテ目に出るタイプ」「ヨコに広がるタイプ」「斜めに走るタイプ」に分かれる。これは織り組織(右綾/左綾/ブロークンツイル)と糸の撚り方向の相互作用で決まる。

ヴィンテージのデニムジャケットを買うとき、コレクターが膝裏ではなく肘の内側を見ているのは、同じ原理がそこにも働いているからだ。

※用語ノート(短文コラム)