「膝が出やすいのが嫌。膝抜けしにくい生地や仕様の見分け方は」という声を耳にすることがある。答えを先に言うと、鍵になるのは生地の「伸びたあと、どれだけ戻るか」という性質だと思う。
膝抜けとは、伸びたまま戻らなくなること
膝抜け(ニーバッキング)は、膝を繰り返し曲げることで生地が伸び、そのまま元の形に戻らなくなる現象を指す。正座や自転車、しゃがむ動作など、膝を折り曲げる頻度が高いほど起きやすい。
色落ちのハチノスとは別の現象で、こちらは色ではなく「形」の話になる。生地そのものが伸びきってしまい、立っているときにも膝の部分だけふくらんで見える状態だ。
なぜ起きるか——伸長回復性という視点
繊維には、伸びたときにどれだけ元の長さに戻ろうとするか、という「伸長回復性」の違いがある。綿100%のリジッドデニムは丈夫だが、この回復性はもともと高くない。伸びたら伸びたまま、というのが綿の性質に近い。
織りの密度も影響する。経糸・緯糸の打ち込みが緩い生地は、繊維同士の拘束が弱く、局所的な伸びが起きやすい。反対に、打ち込みの詰まった高密度な生地は、繊維同士が支え合うため、伸びに対してある程度粘る。
ポリウレタンなどの伸縮性のある糸を混ぜたストレッチデニムは、伸びても戻ろうとする力が働くぶん、膝抜けは起きにくい傾向がある。ただしストレッチ性を優先しすぎると、今度は生地の張りやハリ感が失われるという別の側面も出てくる。
生地屋から見た、見分け方のヒント
店頭で完成品を見て判断するのは難しいが、いくつか目安はある。
ひとつは生地の厚みと密度。ヘビーオンスで打ち込みの詰まった生地は、薄手の生地に比べて伸びにくい傾向がある。もうひとつは糸の情報で、ストレッチ混率が明記されている生地であれば、回復性という観点でひとつの判断材料になる。
あとは縫製側の工夫も大きい。膝裏の運動量を見込んだパターン(ゆとり)の設計や、当て芯を入れる仕様など、生地だけでなく作り方でも膝抜けのしやすさは変わってくる。生地と縫製、両方の設計が合わさって、はじめて「膝が抜けにくい一本」になるのだと思う。
正直、これさえあれば絶対に抜けない、という答えは持ち合わせていない。ただ、生地を選ぶ段階でできることは、思いのほか多い。今日も、打ち込みの詰まった反物を触りながら、そんなことを考えている。
膝が抜けにくい生地選びは、仕様のご相談から始まります。
