卸売の仕事は、基本的にお客様からの要望に応える形で進みます。「こういう生地がほしい」という声に、最適な一反を提案する。その繰り返しです。

ただ、仕事の合間に、まだ形になっていない生地の構想が浮かぶことがあります。

古着が教える「空気感」

ひとつは、ヴィンテージの古着の中で出会う、あの独特の空気を持った生地。

糸が均一でなく、織りもどこか不ぞろい。しかしそれが時間とともに唯一無二の表情になっていく。現在の技術で再現しようとすると、精度が高すぎて「きれい」になりすぎる。意図的に作る「揺らぎ」と、当時の設備の限界から自然に生まれた「揺らぎ」は、質的に異なるものです。

糸の選定、織機の設定、染色工程——一つずつ変数を動かしながら、あの空気に近づく方法を模索する。答えはまだ見えていませんが、試行は続いています。

「普通の一反」の難しさ

もうひとつは、もっと地味な話です。

毎日履けるジーンズのための生地。派手さはいらない。ただ、手に取ったときに「これなら長く付き合えそうだ」と感じてもらえる一反。時間をかけて、その人の身体と生活になじんでいく生地。

特別ではない、普通に寄り添える生地。それが実は、最も難しい領域なのかもしれません。

構想を持ち続ける

どちらもすぐに形になるものではありません。けれど、構想を持ち続けることが、いつか来る機会への準備になると考えています。

素材の企画は、ご依頼を受けてから始まるものだけではなく、日々の現場の中で、少しずつ言葉やイメージとして蓄積されているものでもあります。ALLBLUE が大切にしているのは、その積み重ねを、いつかの一反として形にすることです。